三宅島島民の生存権・人権を保障し、
     帰島へ向けた第2次提言(案)

                                    2002年11月18日
                  災害被災者支援と災害対策改善を求める東京連絡会(東京災対連)
                   連絡先 東京都豊島区南大塚1-60-20-10F 東京労連内
                   電 話 03−3943−6461

はじめに

 本連絡会は、その前身である「三宅避難島民要求実現連絡会」として2001年4月23日、「三宅島の島民が一人残らず安心して帰島するための緊急8項目提言」をまとめ、避難島民の支援・要求実現のため微力を尽くしてきた。今回、ガス噴出の減少状況に鑑み、第2次の帰島へ向けて提言をまとめたものである。

 三宅島雄山の噴火災害はその後有毒ガスの噴出が続き島民の避難は3年目という異例の長期に亘っている。そして島民3,791人(1,948世帯)は都内23区26市3町2村(島しょ町村を含む)を中心に全国に分散されている。島では自然と共生し、お互いの強い絆で自給自足的暮らしをしてきた多くの島民、特に高齢者にとっては全く異なった都市環境の中での孤立した生活で、被災者は帰島の予測もできず雇用、収入も乏しく生活は危機的状態となっている。また、島の家屋、家具、農地、漁場などが日々有毒ガス、泥流、白蟻、鼠などで荒廃してゆく状況で、帰島後の生活再建の目途も立たず、将来展望ももてない深刻な苦しみに落ち込んでいる。しかし、この様な事態に最も対策を講じなければならない自治体である東京都のこれまでの対応は遅れるというより、極めて冷たいものであった。この中で、最近のガス濃度の低下の情報で帰島が現実化してきた現在、帰島後の生活再建、島の復興のための道筋を立て公的支援策も具体的に定めなければならない事態となっている。
 わが国の最高法規である憲法は、国の社会的使命として生存権を保障することを明記している。また、自治体は地方自治法で住民の福祉の増進を図ることとされている。したがって、我々はこれまで三宅島の被災者を支援、激励するとともにその生存権、人権を守るために国、自治体に支援対策を要求してきた。災害の現象は自然条件、社会条件によって異なり、その対策も個別によって異なってくる。したがって、災害に対して公共機関は常に新しい施策、制度を加えて対応しなければ効果は上がらない。前例がないとして被災者の要求を拒否する行政側の論理には根拠がなく、これは、今までの災害対策の法制度の発展過程がそれを証明している。また、災害には地域性があり、このためその対策は現場の実態に基づいて講じなければならない。したがって、自治体の役割は大きく自ら積極的に対策を進めるとともに、また、被災自治体として国にも支援を働きかけなければならないし、国もそれに応じる責任がある。
 したがって、長期避難という異例の災害を受けている三宅島被災者に対して、新しい制度、施策を講じてその生存権、人権を守る様に、東京都は勿論全ての関係団体が以下の「提言」の実現に向け努力されることを願うものである。

T.帰島に向けての対策について
 二酸化硫黄ガスの放出は依然続いてはいるものの、その危険性は格段に少なくなっている。都は、環境基準を上回る測定値が散発的に出ていることを、全員帰島を拒む理由にしているが、この論理で言えば、NOXが環境基準を上回っている都心の環状8号線以内の住民は、全員避難しなければならないことになる。要は、環境基準と、健康に重大な影響を及ぼすガス濃度との間の「グレー・ゾーン」を賢明に利用して、島民が現に被っている被害や不安を、最小限にとどめる施策が必要なのであり、これは、多くの火山学者が同意している「火山ガスと共生する帰島生活を」という提言にも合致するものである。
  平成13年三宅村アンケートでは85%以上の世帯が「何をおいても帰島したい」「島での生活の目途が立てば帰島する」と帰島を希望している。また、「情報提供」「情報 公開」を望む声は引き続き多い。こうした切実な避難島民の思いに緊急に応えることが求められる。

1.火山ガス、泥流等危険要因の現状と推移を把握し、島民へのその情報伝達と対策の提示を行なうこと。火山ガス・泥流の観測点を増やし、テレメータリングによってガスの濃度と動き・泥流の状況を把握して、道路交通情報のように、リアルタイムで各家庭や機関に通報できる体制を作る。

2.帰島後の島民の生活再建のための要望調査を行なうとともに、それに対する支援策を提示すること。また、家屋の修復、再建、土地、植生等暮らしに必要な環境整備と支援安全対策を明確にすること。
 帰島後の住居は決定的に重要である。地域によってはガス濃度が高かったり、泥流の状況で居住困難な地域も存在する。安全性が確保できるまで、災害復興公営住宅等を近場に建設し住まいを保障することなどが求められる。

(1)クリーンハウスは、1箇所に集中して建設するのではなく、各集落・校区等、適当な小ブロックごとに分散建設すること。

(2)各集落ごとに「先遣隊」を編成して先行帰島してもらい、集落内の住宅の保全管理に当たるのと併せて、全員帰島へ向けての課題の収集・分析に当たること。それに要する経費は、公費で支弁すること。

3.観光、商工業、農・漁業など地場産業の復興方策を提示すること。地場産業の復興は帰島後の就労対策の要となるものであり、また、帰島へ向けての意欲を高めるものである。三宅村アンケートや8月の対話集会でも様々な要望・意見が出されており、これらを充分取り入れた復興方策の提示が求められる。
 その際、避難島民自身の参画により、地域のコミュニティを大切にした計画をつくることが求められる。

4.学校の再開と教育条件の整備について方策を示すこと。学校が再開されなければ、親も帰島できない。子どもたちの安全・健康管理をはじめ、長期の避難生活で心に受けた傷のケアについても重視し、教員の配置については充分考慮し、減員や配置替えは原則として行わないことが求められる。

5.復興にあたっては、米軍NLP基地の押しつけは行わないこと。

U.避難生活維持、安心のために
 三宅村が平成13年10月に行なった生活実態調査で、避難前と比べて収入の状況は、「全くなくなった」16%、「5割以上減った」と「5割ぐらい減った」を合わせ避難前と比べて大きく減った世帯は35%であった。「自由意見」では「年金生活をしているものに対して介護保険料は大きいので村のほうで何とかならないか」など介護保険料の減免に対する要望は強くその声は悲痛になっている。
 また、NHKが14年7月に行なった住民調査では、「収入が減った」が72%、「変化がない」20%。仕事については、「正社員など常時雇用」が30%、「アルバイトやパートなどの臨時雇用」が30%で、月収は〜5万円が10%、5〜10万円が25%であった。避難後の生活の変化については、「預貯金を取り崩して生活費にあてている」が56%、「生活費を切り詰めている」が54%、「借金をしたり融資を受けて生活費にあてている」が13%となっている。
 現在の暮し向き・今後の生計の見通しも、全体的に厳しくなってきている。生活保護の弾力的運用では、避難島民の現状を救済しきれない。このような実態を放置しておくならば、帰島前に島民の生活は破たんすることは明らかである。

1.当面の健康、生活維持のための対策を実施すること。

(1)心のケアも含めた健康・医療対策を緊急に実施すること。
 避難の長期化に伴い高齢者が体調を崩している問題や、通院時の交通費の高負担という経済的悩みがある。これらに対する対策を実施することが求められる。

(2)生活維持のため生活支援制度を緊急に実施すること。
 避難生活も3年目に入り、三宅島民の生活格差の拡大はますます大きくなるばかりである。高齢化率も33%と高くなり、国民年金受給者で高齢者は三宅島でこつこつと貯金してきたものを取り崩してつつましく生活をしている。
 しかしこの人たちは、何時避難解除になって帰島できるか分からず、また、避難解除になって帰島したときにどれだけ金がかかるか分からないなかで不安な日々を過ごしている。これに対して、東京都は生活保護の弾力的運用で支援しようとしているが、これでは限界があり、現に生活保護の該当者が300世帯あるといいながら現在生活保護の受給者が100世帯にも達していない現状を見ても明らかである。
 新たに災害保護の基本理念を確立し、生活支援1日一人1,000円の食費、生活雑費として1ヶ月50,000円以上支給すること。

(3)国民健康保険料や介護保険料の減免、村に対する補助特例措置を国と東京都で実施すること。
 避難生活で収入が著しく減少し、経済的に苦しい中で税等の納入は延伸されているが、村民は帰島後払わなければならないのだからということで、苦しい生計をやり繰りして納入を続けている。また、来年度からの介護保険料の試算は8,300円を上回ると報道されている。この大幅な引き上げの試算は避難生活からくるものであることは、施設入所者は避難前は50名、避難後は80名、サービスを受けていた人も120名から200以上と激増していることを見ても明らかである。

(4)雇用・就労対策、融資・返済猶予・利子補給等避難島民、家族の状況、要望に応じたきめ細かな対策等を実施すること。
 避難島民は環境の異なった大都会の中で就業に努めているが、避難前との比較では不安定な「臨時雇用」が増大している。中でも中高年世帯での求職希望が高く深刻である。帰島までの雇用・就労対策を一層充実させることが求められる。
 自動車や住宅ローンなどの返済、事業のための借入金の返済している世帯も多数ある。返済不能に陥っている世帯が相当数に上っており、特に事業資金では深刻である。一刻も早い対策を提示することが求められる。

(5)島内の現状も含め被災者への災害情報の広報、被災者間の交流・連携への支援策を実施すること。
 三宅島島民連絡会の主催した対話集会には都内7ケ所で600名以上の避難島民が参加した。帰島を控え、広報・交流・連携への支援策が求められる。

2.島内の資産、環境対策のための当面の対策について

(1)家屋等資産の被害について実態を調査・把握し、復興・支援対策に資すること。
(2)家屋、資産の被害拡大防止対策を緊急に提示し、実施すること。
 補修で修復できる家屋は多数残っている。精神的な安心感、環境保全のため廃棄物の処理まで考慮し、これらをできるだけ生かす。そのためにも、屋根補修、カビ防止、さび止め、シロアリ・害獣の駆除を早期に公費で実施し、経済効果を高めるなど早急な家屋・資産の被害拡大を防止することが求められる。
(3)一時帰島の期間延長、人数、回数を増やし、その安全対策の充実(地域毎の火山毒ガスの観測と情報伝達手段の整備、クリーン室・ハウスの確保・設置等)、渡航経費の助成等を行なうこと。

V.三宅島村や都の職員・民間労働者等への安全、労働条件について
 長期の避難生活に加え、災害対策での奔走、島民の生活全般に対する業務を行なっている全ての職員、また、悪条件化での復興作業に従事している職員・民間労働者の安全・労働条件については十分配慮すること。
                                      以上