新春インタビュー
なくせ貧困と格差 憲法守れの声大きく

  〈プロフィール〉
  うつのみやけんじ/弁護士/前日本弁護士連合会会長/年越し派遣村名誉村長/脱原発法制定全国ネットワーク代表世話人/文化放送のラジオ番組レギュラーコメンテーター
 宇都宮健児さん(前日本弁護士連合会会長)

 新年あけましておめでとうございます。昨年は、参議院選挙、東京都議会議員選挙があり、自民党が大きく議席を伸ばし、共産党が躍進、民主党が大きく後退しました。衆・参両議院で、与党が過半数を占め、昨年末には、特定秘密保護法、国家安全保障会議(日本版NSC)設置法、社会保障のプログラム法案など、国民の反対の声を無視して、強行採決で法案を成立させました。
 東京では、オリンピック・パラリンピックの2020年開催が決定。東京都政では、徳洲会問題で猪瀬都知事が辞任し、二月に再び東京都知事選挙という大変な状況になっています。
  そのような中、2014年にむけ運動の大きな飛躍を目指して、「東京はたらく仲間」久保編集長が、弁護士の宇都宮健児さんに、情勢や労働組合の役割などについて直撃インタビューしました。

 ●本日は、お忙しい中、インタビューを快くお引き受け下さりありがとうございます。早速ですが、今、国政はどうもきな臭いにおいがして、平和・社会保障が危ないと感じますが、情勢をどのように分析されていますか?
宇都宮 まず一つ重要なのは、安倍政権が目指す憲法改悪の動きです。それに連なる法案は、特定秘密保護法、国家安全保障会議(日本版NSC)設置法です。この臨時国会で通りました。
 特定秘密保護法というのは、国民の知る権利の侵害、国民主権を侵害するものです。民主主義社会というのは基本的には情報公開を徹底しないと、国民は正しい判断ができませんし、国民主権の行使もできないわけです。だから、情報公開の徹底こそ求められています。とりわけ日本というのは、原発事故が起こった時のメルトダウンの事実とか、スピーディの情報を隠していました。被ばくを避けることができたのに、情報を公開しなかったことで、福島の避難者がかなり被ばくをされた。それから、沖縄返還交渉における沖縄密約があります。米軍の移転費用、表向きは米軍自身が400万ドル負担するということでしたが、実は密約があり、全部日本が負担。こういう問題について、情報隠しをずっとやってきているわけです。沖縄密約については、アメリカの公文書によって後から分かったにもかかわらず、日本政府が、それについての明確な見解を示していません。
  ですから、日本に必要なのは、情報公開の徹底なのです。それを反省もしないで秘密保護法を作るというのは、ますます政府に都合の悪い情報は隠していく、基本的には民主主義社会を窒息させるような法律だと思うのです。

実質的な改憲阻止
 ●加えて、国家安全保障基本法なども今後出てきそうですが……?
宇都宮 そうですね。国家安全保障基本法は、おそらく今度の通常国会で出されるのではないでしょうか。これは、法律で集団的自衛権の行使を認めようとする法律です。今まで憲法九条の下では、アメリカ軍が攻撃された時に日本の自衛隊が反撃するのは認められないというのが一貫した解釈だった。それを集団的自衛権の行使を認めて、アメリカとともに戦争をやれる体制を作ろうとするものです。つまり軍事立法です。秘密保護法だけではなく、この国家安全保障基本法を阻止して、集団的自衛権の行使は認めない、実質的な憲法九条の改憲を認めないというふうに繋げていかなきゃいけないと思っています。それから安倍政権の特徴は、社会保障をどんどん切り刻んで改悪をして、その浮いたお金は軍事費にするということです。顕著に現れているのが、昨年の通常国会での生活保護基準の大幅切り下げです。3年で670億円もの削減です。自民党政権下でも生活保護基準を下げたのは過去2回で、2003年に0.9%、2004年に0.2%でした。ところが今回の安倍政権の引き下げ幅は平均6.5%、最大10%です。前代未聞の大幅な切り下げです。加えて、生活保護基準を下げるだけでなくて、生活困窮者を生活保護から締め出すような生活保護法の改悪をやっているということが問題です。この生活保護の改悪を突破口にして、医療・年金・介護など社会保障全体の改悪を狙っています。

労働者には地獄の国
 ●労働問題では、どうでしょうか?
宇都宮 雇用の問題も深刻で、安倍政権は企業が世界一活動しやすい国づくりをスローガンに掲げていますよね。成長戦略の重要な要として、国家戦略特区構想があります。その政策を通じて、どんどん労働分野の規制緩和を促進していこうとしています。
 2008年の暮れから2009年の初めにかけて「年越し派遣村」を取り組みました。雇用破壊とか貧困の拡大というのが派遣切りで明らかになり、国民の批判が高まって2009年夏の衆議院選挙での政権交代につながったわけです。そのきっかけとなった派遣法は、規制の強化をというう声が高まりましたが、今回安倍政権になったら、派遣切りを生み出した派遣法をもっと緩和しようとしています。たとえば、専門性の高い26業務に限定した無期限派遣を全業務に拡大するなどの緩和政策です。今、派遣と同時に非正規が増え、非正規労働者が2000万人を突破して四割近くになっています。不安定雇用・賃金の低さが大きな問題になっています。正社員はというと、長時間労働とか、過労死・過労自殺、劣悪な労働条件などが生じています。その正社員の中に更に限定正社員という制度を作って、これまで以上に解雇しやすいような制度や残業代を払わなくても良い制度、金銭による解雇の自由化などが狙われています。だから安倍政権の世界一企業が活動しやすい国づくりというのは、僕は企業にとっては天国じゃないかと思うのですが、労働者にとっては地獄の国づくりなのですね。

社会的に支援運動
 ●これらの政策に対して、様々闘いが起こっていますが、労働組合としてどんな闘いが必要だと思われますか?
宇都宮 秘密保護法は通ってしまいましたけれど、反対運動が日に日に広がりました。この秘密保護法については法律ですから、成立してもそれは同じような手続きで廃案にできるわけです。成立したからといって諦めず、今の反対運動の盛り上がりを、今度の通常国会に向けて更に運動を広げることが非常に重要ではないかと思っています。
 今、最低賃金引き上げの運動に関わらせてもらっています。最低賃金法というのがあって、それ以下の賃金だと処罰されるわけです。皆さん春闘を闘っていますが、ワーキングプアの賃上げ闘争は最低賃金引き上げの秋闘としてみてはどうでしょう。そこを上げたら皆のためになるわけです。それは労働組合だけがやらなきゃいけない課題ではなくて、地域の住民とかいろいろな人が声を上げて、不公平・不平等を是正する、こういうことをずっと広げていくと皆が理解するはずです。
 また、非正規労働者の闘いを支援する社会的な運動を、もうちょっと起こしたらどうかと思います。まず労働組合とか労働者自身は当事者ですので、立ち上がって闘う必要があります。それと正規と非正規が連帯した闘いが重要です。
 非正規労働者がどんどん増えて、年収200万未満の人が6年連続で1000万人にもなっているにもかかわらず、年収5000万を超える人が、この10年間で3倍に増えています。
  どんどん労働者の貧困化が進んでいく中で、金持ちがめちゃくちゃ増えているというこの不公平・不平等というのは頭にきますよね。そういうことに怒りを抱くのは、何も労働者だけではないです。
社会的な公平とか不平等の是正を求める必要性というのは、学者や弁護士とか一般の市民だって、当然感じるわけです。労働者の闘いに対する社会的な支援の輪をどう広げるかということを、もっと工夫する必要があるのではないかと思います。

憲法を守る都政に
 ●続いて、都政問題ですが、猪瀬氏が辞任し再び都知事選挙になりました。今の都政について、どう考えていますか?
宇都宮 辞任は当然だと思います。政策的にも色々問題はありましたが、裏金問題が発覚し、猪瀬さんに都政を任せられないという声が広がった結果ですね。
私達は、一昨年の選挙で、市民のカンパによって公明正大に闘いました。一方でああいう裏金を猪瀬さんが貰っていたことはとんでもないことです。政策的にも、石原さんの政策をずっと継いでいましたね。私達が掲げた政策というのは、脱原発・反原発、反貧困・福祉の充実、教育行政の転換、憲法擁護でした。猪瀬氏は、原発問題では廃炉を提案しなかったし、福祉の問題でも、待機児童、保育所不足、特養ホームの不足が、ますます顕在化して、改善の方向がありませんでした。憲法問題についても曖昧な態度をとり続けました。転換が必要だと思います。
 オリンピックは、都民が歓迎するものにすることが大切です。また、平和と友好の祭典ということは、やはり憲法を守らなくてはいけない。だから憲法改悪や秘密保護法に反対します。今回の都知事選挙では、秘密保護法について、どういう態度をとるかということも重要な争点となりますね。
 ●そうですね。国民・都民の声が反映され、人にやさしい都政が実現するといいですね。
宇都宮 「都政を変えたい」と思う全員が力をつくすことが重要だと感じています。
 ●東京地評も全力を尽くしたいと思います。最後に一言お願いします。
宇都宮 そうですね。これまで無関心だった人、特に憲法などは若い人がもっと、もっと、当事者意識をもってほしいと感じています。様々な運動の中心になるのが、やはり労働運動です。東京地評の皆さんの活動の飛躍と発展を期待しています。
 ●長い時間ありがとうございました。