■第128回 2014/11/15

   オルグの現場から 95
     幅広く認められている使用者の権限

◆日本では、労働者に配転や残業を命じる使用者の権限が幅広く認められている。「高齢の母親や就学前の娘を含む家族との別居を命じる配転命令は、転勤に伴い通常甘受すべきもの」(東亜ペイント事件・最高裁)、「労働者が残業命令に従わなかった懲戒解雇は有効」(日立製作所武蔵工場事件・最高裁)等の判例がある。また、就業規則に時間外労働の理由を明記し三六協定を締結していれば、労働者は残業命令に従わざるを得ない。◆新宿一般労組へ相談に来た五〇代の女性は、重度の白内障の母親とぜん息・起立性調節障害を抱える高校生の娘さんと三人暮らしをしている。会社は、本社のある徳島県への非情な配転命令を女性に下した。労働審判で配転無効となったものの、会社が異議申立をしたため民事訴訟で争うことになった。◆また、警備業で働く当労組の六〇代の組合員は、三ヶ月連続深夜勤務や三六時間連続勤務などを命じられていた(この会社では三六協定はなかった)。男性は、現場によってはトイレにも行けずオムツをフいて勤務していた。団体交渉・裁判と闘い、やっと解決できた。◆最近も、就業規則や労働契約書の作成、労働時間の管理など、使用者の当然の責任を一切放棄した出版社で、働く三〇代男性から相談があった。早速、団体交渉を申し入れた。会社は他の従業員を労働者代表にして、労働者側の意見書を添付し、賃金減額など不利益変更を伴う就業規則を労基署へ提出した。◆組合のない職場で働く労働者は、信じがたい無権利状態に置かれている。労使紛争を事前に防止するための制度・政策作りの重要性を現場で痛切に感じる。 (新宿一般労組執行委員長 保科博一)

すぐに役立つ元気の出る労働相談1問1答(冊子紹介)
部内資料:東京地評労働相談弁護団(報告書式等有)