■第70回 2009/08/15

   オルグの現場から 36
    地に落ちた経営モラル その2

▼前回の続きである。中規模の建築設計事務所でパートとして働いていたAさんが突然時給一五〇〇円から一〇〇〇円に切り下げられ、労働組合に加入し要求書を出したとたん解雇されてしまった問題▼七月一〇日の第三回目の労働審判で、会社代理人が「解雇は撤回します。時給も元の一五〇〇円に戻しますので職場復帰してください」と新たな提案を行った。そこで審判委員会も了解した上で復職にあたっての労働組合との労使関係、団交の持ち方などについて当事者交渉で詰めることになった▼早速組合から「団体交渉開催要求書」を会社あて郵送した。しかし会社からは、なしのつぶて▼そこで数日後、会社社長に電話して団交日程を決めようとした。すると「撤回は撤回する」との理解しがたい返事がきた。「意味がわからない」と言うと「解雇を撤回することを撤回するんだ」と言う。つまり解雇は撤回しないということなのだ▼唖然として「労働審判で公に『解雇は撤回する、時給も元に戻す』と約束したことはうそだったのか」と抗議すると「とにかく解雇は撤回しない、審判をもらうことにした」と平然と開き直る有様であった▼原則三回で終了する労働審判なのに幻の自主交渉をはさんで異例の四回目の審判が八月一一日に開かれることになった。当然この間の経過は陳述書で提出したが、裁判所の労働審判での約束をも踏みにじって、恬として恥じない経営者の姿にはあきれるばかりだ▼最近、いとも簡単に労働者を解雇する経営者が急増しているが、労働者は解雇されたら、その日から生活が立ち行かなくなってしまうことを企業家はもっと真剣に考えるべきだ。(

                       (三多摩労連、坂ノ下征稔)