■第63回 2008/12/15

 オルグの現場から 29
       たった1回の虚偽報告

 地域にチラシ等をポスティングする仕事があるが、そこで働く労働者と妻が青ざめた顔で相談にやって来た。話を聞けば、ある日三千枚のチラシ配布を命じられたが、その日に用事があって、どうしても三千枚のチラシを配布することができなかった。しかし、会社には配布完了の虚偽の報告をしてしまった。そして、その事が調査によってバレてしまい、社長が怒髪天をついて怒り「オマエは信用できない」「これまでの仕事も信用できない」と、誓約書(虚偽の場合の罰金内容・本人同意)に基づく約一〇〇万円もの違約金の請求をしてきた。▼早速、会社に電話を入れたが、社長は労働者が組合に相談に行ったことが、さらに怒りを増幅させ、私にまで怒りをあらわにしてきた。▼しばらくしてから冷静さを取り戻した社長と話し合う機会を持つことができ、たった一回の虚偽報告が過去のすべての仕事も虚偽だと断定することはできないと主張。したがって、本人も認めている虚偽報告をした一回分については「ノーワーク・ノーペイ」ということで賃金カットも止むを得ないが、いくら労働者と交した誓約書があるからと言って、それを盾に過去に遡っての違約金請求は労基法第16条(賠償予定の禁止)に違反する行為となり認めることはできないと述べた。▼社長はそれではと、チラシ配布を請負った請負先から会社が損害賠償を訴えられたどうするんだと反論をしてきた。▼そこで、そうならないように二度とこうした行為が起きないようにすることが社長の務めではないかと説得し、何とか罰金を払うこともなく解決することができた。まだ若い夫婦であったため、今回の相談のあった数日間は生きた心地がしなかったようだ。

                        (新宿区労連 屋代眞)