◆第35話 2006/03/15

         辞  世

辞 世
 旅に病で夢は枯野をかけ 廻る

 芭蕉の有名な「辞世」の句である。死のまぎわに、はたして句などよめるものかどうか。と思っていると、こんな歌があった。

 詩も歌も達者な時によみ ておけ
  とても辞世の出 来ぬ死にぎは

 もっともである。テレビドラマで、死にぎわに長々としゃべる人がいるが、自分には、とてもムリだ。自分の死さえ笑いとばしてしまう人種もいた。

 冥土より今にも迎ひ来り なば
  九十九まで留守と 断れ=@  (蜀山人)

 極楽は十万億土とはるか なり とても行かれぬわ らじ一足=@ (一休さん)

 さて、都営地下鉄「かちどき」駅から五分、春陽院に十返舎一九の辞世の歌碑がある。

 此世をばどりゃおいとま にせん香の 煙りととも に灰左様なら

 この洒落心、好きである。

 
(元全信労芝信従組 福田克己)