◆2020/05/7

  新型コロナウイルスパンデミック下の労働組合運動とポストコロナにむけて


東京地方労働組合評議会
 事務局長 井澤 智

 
  1. 新型コロナウイルス−パンデミックに
     新型コロナウイルスは想定を超えるスピードでパンデミックとなり、欧米先進諸国においても医療崩壊と大量の雇用喪失・景気後退をもたらしています。
     日本においても水際対策の失敗、政治日程を優先させ基本施策や対策本部設置の遅れという失政により感染が拡大しました。また、高度な医療技術と制度がありながら社会保障「改革」と称して医療保険体制を切り崩してきた政治の結果、医療従事者の絶対的不足、重症患者への対応の限界、医療資材の枯渇など、社会を揺るがす危機に直面しています。

  2. 東京地評の基本的スタンス−たたかう労働組合のローカルセンターとして
     東京地評は首都東京のたたかう労働組合のローカルセンターとして、全ての労働者、非正規労働者、フリーランスの命と健康、雇用・仕事、収入の安定を政府と大企業に要求し、様々な工夫を凝らして運動をすすめます。また、深刻な経営状況にある中小零細企業への直接支援策の拡充、科学的根拠に基づく実効性のある新型コロナ感染対策を要求します。
     労働組合としても感染対策を最大限重視し、「三密」を避ける一方で、感染対策に便乗する人員削減、賃金カット、補償なき自宅待機、あるいは長時間過密労働、ハラスメントを阻止し、この局面だからこそ一層ジェンダー平等をすすめます。「新型コロナ」の終息への見通しは不明であり、自粛が数カ月に及ぶことも考えられます。東京地評は、高まり続ける労働者の不安に丁寧に対応し、職場や地域において労働者の基本的権利を守り抜くべくたたかいます。

  3. 緊急に必要な経済対策−直接給付と支援、消費税減税
     緊急事態宣言が発せられ、国民の行動自粛と広がる営業自粛、自治体の休業要請の影響は深刻です。事業規模117兆円の緊急経済対策が閣議決定されてなお、その実効性は担保されず、医療崩壊と経済不況の瀬戸際に立たされています。中小零細企業は、自粛要請=コロナ不況が計り知れないダメージとなり、消費税10%増税に苦しんでいたところに追い打ちとなり、倒産・廃業の危機に直面させられています。
     貧困の現実はまさに非常事態です。緊急経済対策は、自粛と補償一体の直接支援策の拡充、国民の命と生活を守るため国民の税金を直接投入する経済政策、当面の消費税5%への緊急減税を要求します。先進各国では直接給付を柱とする経済対策を直ちに実施しました。日本も政府の決断で同様な施策が可能です。財源は、不要不急の軍事費の大幅削減、大企業優遇税制の廃止、巨額の内部留保への課税、富裕層に対する累進課税の強化によって十分に賄えます。
     世界各国が協力して新型感染症収束と国民の命と生活を守る経済対策を実施しなければ、先進諸国でも財政破綻するなど、まさに戦後最大の非常事態となってしまいます。

  4. 世界が直面する危機的課題と東京地評の戦略的スタンス
     現在の世界システムは、「新型感染症の危機」が多くの国際的医療機関等から警告されていながら有効な防止策をとることができなかったこと、パンデミック後に人々の命を守れないことを露呈しました。暴走するルールなき資本主義の矛盾と脆弱さ、社会保障・福祉政策を削減し、公的社会保障制度を資本の利潤の対象にする、貧困と格差を拡大する新自由主義政策の機能不全は明らかです。さらに、この危機的状況を利用し、国民に分断を待ちこむ排外主義的ポピュリズムの政治が台頭してきています。
     東京地評は、社会、経済、政治の根本的問題を研究し、解決に向けた方策と実践について、幅広い労働者と市民の力を結集し運動を構築します。「新型コロナ対策本部」を設置し、喫緊の課題、感染防止対策や緊急経済対策、医療制度の抜本的拡充に取り組みます。
     東京地評は、労働者の基本的権利を守り、解雇や雇止め、内定取り消し、仕事の大幅削減に苦しむ全ての労働者、フリーランス、生活困窮者、高齢者・障碍者・外国人を支援する相談体制を拡充します。同時に未組織労働者の結集と組織化をすすめ、すべての労働者の団結を強化します。いま、危機的非常事態にあるからこそ一層、労働組合が職場と地域ですべての労働者の権利を守る砦としてたたかいを強化します。

  5. 「ポストコロナ」にむけて
    「ポストコロナ」の社会は、世界的に「既存の価値観」や「社会体制」に大きな変化を迫ります。グローバル化した世界システムのもと10億ドル以上の資産家が過去10年間で倍増し、最富裕層2153人は最貧困層46億人(世界人口の60%超)よりも豊かで、最富裕の22人はアフリカのすべての女性よりも資産を保有しています。逆説的なのは「国境なきグローバル化した世界システム」を「守る」ため、世界各国が1兆7300億ドル(2019年、約190兆円)もの軍事費を「浪費」し、しかも毎年増加し続けていることです。世界の最富裕層1%にわずか0.5%の追加「財産税」を10年間支払えば、高齢者介護と保育、教育、保健分野に1億1700万人分の雇用を創出できるとの試算もあります。
     世界人口の圧倒的多数が求める貧困の根絶と労働により生み出された富の公正・平等な配分、医療と公衆衛生、社会保障制度の抜本的拡充に、必要な生産力と財政的基盤は現実に整っています。世界的な規模で、計画的な社会変革により「新型コロナ」や新たな感染症に対する問題も解決可能です。歴史の変革の原動力は労働運動です。富をつくりだす労働者が、その当然の権利、必要十分な「取り分」を獲得して、必要な社会政策を実行させることは労働運動の使命でもあります。
     東京地評は、コロナ禍の収束と「ポストコロナ」がより良き社会となるよう世界の労働者・労働組合と連帯して行動します。すべての国の人々の命が大切にされる社会、貧困と格差、差別の無い真の持続可能な世界へと変革する運動の一翼を構築していきます