■2006年6月16日
東京地方最低賃金審議会
会長 安西 愈 殿
全労連・全国一般労働組合東京地方本部
副執行委員長  梶 哲宏
東京公務公共一般労働組合
書記次長   清沢 聖子

    最低基準を時間額1,000円に
     −東京都最低賃金の改正に当たっての意見−

はじめに
 いま、日本社会が「格差社会」へと劇的な変貌をとげつつあります。大企業が史上空前の利益を更新し、一部の裕福層がますます富を蓄積している一方で、年収200万円以下の低所得者が1000万人、生活保護世帯が100万世帯を超え、貯蓄ゼロ世帯が2割となり、就学援助受給者が急増しています。少子化の進行など社会のひずみは広がるばかりです。
 憲法は、第25条で「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を保障し、労働基準法は、第1条で賃金は「労働者が人たるに値する生活を営むための必要を満たすべきもの」、第32条で労働時間は1日8時間、1週40時間と定めています。ならば、法が定める最低時間給は、1日8時間はたらけば、最低限度の生活が営めるものでなければなりません。

 私たちはこれまで、
@地域別最低賃金を、時間額1,000円以上、日額7,400円以上、月額15万円以上に引き上げ、地域間格差を解消すること。
A全国一律の最低賃金制度を法制化し、ナショナルミニマムの基軸とすること。最低賃金は非課税とすること。
B産業別最低賃金制度は廃止しないこと。
を中心課題として運動を進めてきました。
 こうした立場から以下のとおり意見を述べます。

1.時間額を1000円に−最低賃金の抜本的な改正を
(1)賃金の底上げのために
 5月30日に総務省は、前年と比較して正規雇用が7万人増える一方、パート・アルバイト、派遣、契約社員など非正規雇用の労働者が72万人も増えて1663万人に達し、労働者全体の33.2%を占めるに至ったと発表しました。これは1984年に統計をとり始めて以来最高の水準です。そして、給与所得が300万円以下の労働者が給与所得者の37.5%に増え、非正規労働者の8割近くが年収150万円以下という実態があります。
 正規雇用から非正規雇用への進行が雇用形態の変化だけでなく、急激な賃金低下をもたらしていることは明らかです。非正規雇用なら低賃金で当たり前という社会は決して正常な社会ではありません。またこの間、租税・社会保険料の負担増もおこなわれています。非正規雇用の賃金を底上げするためにも、最低賃金の大幅な引き上げは待ったなしの課題です。
(2)均等待遇実現に向けて
 いまや3人に1人となった非正規雇用労働者は、家計補助的な役割ではなく、基幹的・恒常的な労働力として欠かせない存在となっています。しかし、パートなど非正規という雇用形態のために、最低賃金すれすれの賃金や労働条件で差別されています。男性正規労働者の時給と比較すると、女性正規労働者67.8パーセント、男性パート49.9%、女性パート44.5%の水準でしかありません。さらに、女性労働者は年収200万円以下が42%、同300万円以下が65%も存在し賃金格差は歴然としています。ILO175号条約は均等原則を定めており、この点からも最低賃金を大幅に引き上げることが必要です。
(3)多くの労働者に影響のある引き上げ
 イギリスでは、低賃金委員会の答申をうけ、今年10月から全国最賃を0.3ポンド(約62円)引き上げて、時給5.35ポンド(約1110円)にします。これは、2005年の賃金昇率4.1%を1.8ポイント上回る5.9%の引き上げで、130万人が恩恵を受ける見通しです。実はイギリスは、昨年も0.2ポンド(約41円)引き上げ、清掃や美容などに従事する140万人の女性労働者に影響をおよぼしています。
 最低賃金の引き上げは、多くの労働者に影響しなければその価値がありません。しかし、ここ数年の影響率はわずか1〜2%です。こうした点からも最低賃金を大幅に引き上げ、その効果を波及させる必要があります。
(4)東京の世間相場を反映させて
 東京春闘共闘会議が、昨年12月4日付けのパート・アルバイトの新聞折込み求人紙を、都内各地から回収して時給調査を実施しました(資料1)。調査件数は2066件に及び、結果は、全都の平均求人時給が951円、職種別では一般事務員929円(270件)でした。また、東京春闘共闘会議が06春闘時に島嶼を除く都内53区市町村を対象に臨時職員の時給を調査したところ(資料2)、48自治体の一般事務員の平均は851円、保育士は964円でした。
 これらと東京都の最低賃金714円を比較すれば、民間企業の一般事務員より215円、自治体の臨時職員より137円も低い実態が明らかになります。さらに、昇給の有無については民間企業の20%で昇給があると回答しており、貴審議会が東京都最低賃金を大幅に引き上げることに何ら躊躇することはないはずです。
(5)生活保護費を下回らない額に
 東京都の12〜19才単身者の、生活扶助と住宅扶助をプラスしただけの生活保護費は、142,300円になります。さらに、生活保護を受けると、国民年金の保険料免除、上下水道料金の免除、NHK受信料の免除、JR通勤定期乗車券の割引などの援護が実施されます。一方、最低賃金を1日8時間、月22日労働で月額に換算すると125,664円で、ここから税金や社会保険料を差し引いた可処分所得はおよそ107,000円となり、食事においては必要な栄養素すら摂取できません。そして、生活保護水準に到達するには、月額で35,000円の引き上げが必要です。こうした状況をじゅうぶん把握した上で、最低賃金の改正作業をするよう望みます。
 なお、公的な制度として民事再生法の個人再生手続きでは、単身者で23万円(公租公課負担修正・東京)の生計費が定められています。

2、審議会の運営は公開原則を貫き、意見陳述の機会を設けること
 私たちは、最低賃金審議会の労働者委員に東京春闘共闘会議49万人を代表して推薦されましたが、これまで同様、なんら基準も示されないまま任命されませんでした。行政機関としての公正性、公明性に疑問を感じずにはいられません。
 せめて、@審議会での意見陳述や、A会長あるいは公益委員との懇談などを設定していただき、直接、意見交換が出来る機会を与えて頂けるよう強く要望します。

さいごに
 現在、最低賃金法の改正に向けて労働政策審議会労働条件分科会のもとに最低賃金部会が設置され、検討が重ねられています。そこで出された公益委員試案修正案には、決定基準の見直しとして「生活保護との整合性」「地域における労働者の賃金」が記されています。昨年のように、生計費や賃金水準の論議を深めることなく、「賃金改定状況調査結果」に基づいて答申を出すようなことは改めるべき時に来ています。
 私たちは、働けばまともな社会生活を営むことができ、夢と誇りをもって生きていけるよう、今年の最低賃金の改正がおこなわれことを強く求めます。