労働運動もねらわれる「共謀罪」
                   弁護士 中野直樹


 今国会に「犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する」というまことに長い名称の法律案が提出された。このなかに「組織的な犯罪の共謀の処罰」がある。
 犯罪集団を取り締まるものと考えたら大まちがい。

 ある会社で…
 リストラの一環として工場の統廃合と労働者の配転・解雇の方針が打ち出された。これに対し、労働者は、労働組合を結成して争議行為にはいった。社長が出席しようとしない団体交渉は進展せず、労働組合は打開を図るため、社長の出席を強く求めた。労働組合の執行部は、社長を出席させた団体交渉では、組合員を待機させ、長時間になろうとも交渉の目途がつくまで社長の退席を認めず、団体交渉を継続することを意思確認した。
 その動きを知った会社は、日頃から防犯協会等でつきあいのある所轄警察署に相談した。警察は、組織的に社長を監禁することを「共謀」しているとして、組合執行部の役員を組織的監禁「共謀罪」で逮捕した。

 自由を奪う監視網
 共謀罪は、まだ実行していなくとも、みんなで相談しただけで「犯罪」とする罪である。いまの刑法では、殺人や強盗などの重大犯罪に限って「予備行為」を処罰しているが、この予備行為よりもまだずっと前の段階である「相談」自体を一般的に処罰しようとするものである。この「共謀」の対象犯罪は五五七にものぼり、被害が発生したときにのみ処罰するという刑法の大原則を大きく変えてしまう仕掛けである。
 そして、自由になされる会合や会話を警察が把握し記録するために、「意思の連絡」をし合う場所や通信手段を押さえる捜査方法を求めるようになる。盗聴権限の拡大やスパイの合法化などである。今回の法律案は、内部通告者の処罰免除規定をおいたり、警察にコンピューター通信データーを差押さえる新たな権限を与えようとしている。
 先日、休日に政党機関紙を地域に配布した国家公務員が公安警察官に「政治活動」を理由に逮捕され、起訴される事態が発生した。有事法制・国民保護法制の名の下に国民が戦争体制に組み込まれていく動きが強まるなかで、警察の平和・民主主義運動の取締りが活発化している。こんな警察に「共謀罪」の武器を与えてはなるまい。詳しくは自由法曹団ホームページに。